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第91話  

篠田初は、松山昌平の心が完全に折れたような表情を見て、思わず笑い出しそうになるのを必死に抑えた。

 ハハハ!諸行無常とはまさにこのことだった。あれほどクールで強気な松山昌平がこんなに弱々しくなるとは、彼女が簡単に見逃すはずがなかった。

 彼女は眉を垂らし、できるだけ真面目な顔を作って重々しく言った。「そうね、天に不測の風雲あり、禍はいつやってくるかわからないのよ。松山さん、もう運命を受け入れるしかないわよ」

 松山昌平は目を閉じ、全てを諦めたような声で言った。「出ていけ。一人でいたい」

 「そんなのダメよ。あなたが私を救おうとしてこんな風になったんだから、私はあなたと一緒に進退を共にするわ」

 彼女の義理堅さに対して、松山昌平は冷淡に拒絶した。「必要ない」

 「本当に必要ない?」

 「出ていけ!」

 松山昌平の冷たい言葉は、まるで氷の洞窟から響いてくるようだった。「同じことを二度言わせるな」

 その時、松山昌平のスマホが鳴り始めた。その音はとてもしつこく、まるで彼が出るまで鳴り続けるつもりのようだった。

 「それじゃあ、松山さん......私はお邪魔にならないように先に出るわね」篠田初は眉を上げ、「気が利く」感じで言った。

 スマホはまだ鳴り続けていた。松山昌平の顔は既に真っ黒になっていたが、ついに我慢できず、低い声で言った。「スマホを持ってこい」

 「松山社長、何あって?聞こえなかったわ」

 篠田初は耳に手を当て、わざと嫌らしい表情を見せた。

 「スマホを持ってこい!」松山昌平は歯を食いしばり、言葉を一つ一つ絞り出すように言った。

 彼はもちろん、篠田初がわざと彼を苛立たせていることに気づいていたが、今は仕方なかった。どうせ彼女に頼らざるを得ないのだから!

 篠田初は笑いながら言った。「それでいいのよ。必要ならちゃんと言えばいいのに。強がっていても苦しいのはあなた自身よ」

 そう言いながら、彼のスーツのポケットからスマホを取り出し、彼の耳元に当てた。

 電話の相手は彼の秘書の東山平一だった。彼は慌てた声で言った。「社長、今どこにいらっしゃるんですか。あなたが美食軒を出てから、ずっと連絡が取れませんでした。お母様も何度も電話をかけてこられて、ご祖父様が今夜海都に到着するので、必ず迎えに行くようにと言われてます」

 松山昌平は眉を
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